「また思い悩んでいるようだな、セシルよ」
仲間と離れた場所に一人立ち、考え事をしているセシルの前に現れたのは、彼の兄でもある漆黒の魔道士・ゴルベーザだった。
「兄さん…」
「折角クリスタルを手に入れたというのに浮かぬ顔とは」
「兄弟だから、悩んでしまうんだ」
うなだれたセシルを見て、ゴルベーザは低く笑った。
悩みをぶつけても兄は単純な答えなど返してくれはしない。回答に行き着く道を示してくれるだけで、真実は己の手で掴んでこそ意味があるものだという姿勢を一貫して取っている。セシルの胸に浮かぶ気持ちを素直に話したとしても、納得のいく答えを聞く事はできないだろう。
だが、それでもセシルは意を決したように顔を上げ、兄の顔を真正面から見つめた。
「兄さんは、サイキックファイターという肩書きを持っているよね?」
「そうだ、私はお前達のように直接打撃の手段は殆どと言っていい程持っていない。魔法防御で全て跳ね返せるのではないかという疑問か? それならば自分自身で試してみるがいい」
だが弟は静かに首を横に振る。
「では、このいかにもな鎧姿であるのに、エクスデスやガーランドのように物理的な力を使って戦わない事が不満か」
「そんなんじゃないんだ。兄さんの攻撃は全て魔法――この事が僕を悩ませている」
「兄弟なのに似ても似つかぬ攻撃方ではある。だが、育った環境が違えばそれもまた不思議ではあるまい」
ゴルベーザの言葉にセシルは視線を落し、握った手を口元に当てると親指を噛んだ。
「僕はずっと考えていたんだ。――兄さんの攻撃手段は全て魔法、でも…誰がどうみても迎撃システムや重力システムは魔法とは違って機械がやっている。それはファンタジーとは決定的に違う物理法則によるものであり、むしろSFの範疇じゃないのかな。兄さんにとって魔法とはどのようなものを指しているのか、そもそもサイキックとは超能力や霊力を指す言葉であり、魔法とは別物で、あんな機械とも無関係な――あれ?」
答え、もしくはそこに至るヒント位はもらえるだろうと顔を上げたセシルの前に、ゴルベーザの姿はなかった。
「兄さん待って!――待てよ! ……僕とちゃんと向き合って欲しいのに…やっぱり自分で答えを探さないとだめなのか…僕は…兄さんのことが益々分からない…あんな戦法があるなんて、兄さんはずるいよ…」
一人だけどうにも納得のいかない技を駆使するゴル様につっこみを入れてはいかんのだろうか。
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- 2009/01/22(木) 00:22:03|
- ディシディア|
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