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腰を上げたスコールは、読んでいた本の開いたページをひっくり返したままで伏せ、自分を呼んでいるジタンとバッツの元に向かった。
その光景に通りかかったオニオンは置かれた本を拾い上げて「こんな置き方したら本が傷んじゃうよ」と小さくぼやいた。
しかしよく見ればその本にはいくつかの栞が挟んである。
栞が足りなくての処置だったのだろう、後で綺麗な木の葉でも拾ってきてあげようかと考えたオニオンはふと興味がわいて、栞が挟んであるページをめくってみた。
表紙に「アルティマニアα」と記された本は、自分達の紹介が載せられている本だった。スコールは自分のページを見ていたようだが、果たして栞のページには何が、誰が載っているのだろうかと気になったのだ。
栞が挟んであるのはフリオニール、ジタン、ティーダ、ティナのページ。なんだ自分はスコールから大して興味を持たれていないのかなと、オニオンはややがっかりして本を閉じかける。
「何してるんだい、オニオン?」
背後からの声に驚いて振り向けば、難しい顔で本を見つめていたオニオンを気にしたセシルが腰を屈めて覗き込んでいた。その後ろには無言のクラウドも立っている。
「あ、ううん。本が落ちてたから気になってさ。誰のか分かってるからいいんだ」
慌ててオニオンは本を閉じて胸の前にしっかりと抱えてみせる。表紙を隠したから、セシルには見られていないはずだ。
「そう? それならばいいけど。随分真剣な顔だったから、何が起きたのかと思ったよ。…野暮は言わないけど、あまり刺激の強いものは見ちゃだめだからね」
笑うセシルは小さく手を振って去り、いぶかしげなクラウドもそれに続く。彼らの姿を見送ったオニオンは安堵のため息をつくと、再び本をそっと開いた。さっきは見落としていたが、それぞれのページに赤線が引いている事に気づいたのだ。
いや、正確に言えば、見落としていたのはその法則性だ。
フリオニールのページには『青年』、ジタン、ティーダのページには『少年』、ティナのページには『少女』という単語に赤線が引いてある。栞こそ挟まっていないものの、セシルのページには『好青年』という箇所に、バッツには『青年』、クラウドのページには『青年剣士』という箇所に赤で印が入れてある。
それを見たオニオンは、改めてスコールが見つめていたページを見直した。
果たしてその瞳には『17歳の剣士』という部分にぐるぐるとつけられた赤丸が映っていた。その脇にはとても小さく『?』の記号。
栞が挟まってたページの者はどれも、スコールと年齢が近い。だから年齢不詳だがどう見ても十代ではないWOL、二十歳を超えているセシル、バッツ、クラウドのページには挟まっていなかったのだろう。
静かに本を閉じたオニオンナイトは深く深くため息をついて、この秘密は自分ひとりの胸にしまっておこうと固く決意をした。
そして同時に、クールぶっている割に、少年なのか青年なのかはっきりと明記されていない自分は一体周囲からどう見られているのかをとてもとても気にかけているスコールを、ちょっと可愛いと思うのである。
妙な所でスコールへの好感度を上げたオニオンは、スコールが元の世界でいたいけな子供から「おじちゃん」と呼ばれ、ひどく傷ついた経験があるなどとは、知る由もない――。