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汗を流してすっきりしたのか、水からあがった一行は和やかに談笑しながらそれぞれ脱ぎ捨てた服を身につけていた。
清水に疲れと埃を落として気分もリフレッシュできたのだろう、表情は引き締まり、爽やかさを取り戻したようだ。どの顔も、みずみずしい笑顔に溢れている。
しかしそんな中、いつもと変わらぬ表情で棒立ちのまま固まっている一人の男の姿があった。
「WOL、どうしたんだ。あまり時間がないから手早く済ませると言ってたのはあなたじゃないか」
相変わらず無表情のWOLの異変に気づいたフリオニールは鎧を付ける手を止め、声をかける。鎧装着組は着替えに時間がかかるだけに、微動だにしないWOLの行動を不審に思ったのだろう。
「私の下穿きが見当たらないのだ」
ゆっくりと振り向いたWOLはさして困った様子でもない。
が、やはりこれは一大事だろう。表情に変化こそないが、頭の中が「?」で一杯であろうWOLに変わり、フリオニールは自分のはいている服を確認した後、背後の連中を見渡し声を上げた。
「おーい、皆、WOLのタイツがないんだが、誰かの所に混じったり間違ってないか?」
「アンダースーツがないって? 僕の所にはなかったよ」「WOLのももひきがどうしたって?」
言いながら顔を覗かせたのはセシルとバッツ。
「WOLのボトムは俺の所には来ていないな」「レギンスがないって? ちゃんと探したのか?」と、着替え終わって髪型セット中のクラウドとスコールがWOLの方を見る。
「男のスカートなんかめくれてもがっくりしたもんしか見えないからな、見つからなかったら重大問題だぞこれは――スパッツなら鎧の隙間とかに入りこんでるんじゃないのか?」かなり真面目な顔でジタンは周囲を見渡すが、それらしいものは見当たらない。
「オレん所にはWOLのインナーパンツ来てないッスよ。オレのとは長さ違うからすぐ分かるし」と、ティーダ。
全員が顔を見合わせる中、WOLは少しの間考えていたが「こんな事で立ち止まってはいられない。ティナが合流したら、出発するぞ」と、実に男らしい判断を下した。見事なまでの潔さ、決断力は周囲に有無を言わせぬ迫力がある。
ジタンだけはこの展開に対し、「げっ」と小さく呻いたが、鎧とオーバースカートで股関節周りがしっかりガードされているWOLは、クジャに比べたらまだまだマシな姿である。戦わなければ生肌の太股を晒す事もないだろう。
いざとなれば、WOLが戦わないで済むように全員で一致団結して守ればいい。そんな気持ちが全員の中に芽生えた瞬間だ。
「あれ……そういやオニオンがいなくないッスか?」
「なっ…まさかティナを覗きにいったんじゃ!?」
愕然とするジタンににやにやとバッツが声をかける。
「ジタン、オニオンをおまえと一緒にするなよな」
「ティナを守るために監視に行ったのかもね。ティナは水浴び中、一人になってしまうから」
「…そうだといいんだがな」
クラウドの一言に絶望的な顔になるジタン。そんな愉快なやりとりをぼんやり眺めながら、スコールは『なんで同じものを指してるはずなのに全員言う事が違うんだ』と一人考えていた。
男性陣から大分離れ、ひっそりとした場所で一人水に浸かった後、衣服を身につけた緑の髪の少女はふと、草の上に残された丸まった布を見つけて小首を傾げた。
手にして広げてみると、その全容が明らかになる。
「これ…私のじゃない…」
服を脱ぐ時はなかったこれは、どこから迷い来たんだろう? そう考えるティナに、少し離れた茂みの中から声がかかる。
「ティナ、もう服着た?」
「うん、もう大丈夫。どこにいるの?」
声のした茂みを覗き込めば、ティナがいた場所に背中を向けるようにして隠れていたオニオンがいる。彼は小さな膝小僧を抱え、ひどく真剣な顔をしていた。
「オニオン、どうしたの? 皆と一緒に行かなかったの?」
「いや、その、さ…今のティナはすごく無防備だから、それ履いて欲しいなって…女の子は脚腰冷やしたらダメって聞いた事あるし……あっ、ちゃんと洗って旋風切りで乾かしたから大丈夫、キレイだよ!」
「ありがとうオニオン。私の事、心配してくれたんだ。でもこれ、どこから? このストッキング、私にはすごくぶかぶかなんだけど…」