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一緒に行きたいと必死な弟を前にして、ゴルベーザは内心で頭を抱えていた。行きたいのは山々だが、己の事情がそれを許さない。
ふとある事を思いついたゴルベーザは、まっすぐに見つめてくるセシルに向かい、重い口を開いた。
「昔々、ある所に、とても仲の良い親子がいましたとさ」
「…御伽噺をしてくれるのは嬉しいけど、僕は眠くないよ」
「いいから黙って最後まで聞け。親子は愛情深くお互いを思いあっていたのだがどうにも苦手で、特に、表面上は俺様な傾向が強い父親の愛情表現は不器用この上なかった。普通に可愛がるのではなく、いい年をした青年である息子を子ども扱いをして、からかっては怒らせるというような事ばかりしでかしていた。まあ、皮肉を口にしつつも面倒見は良くて、息子に関してでなければ表裏のない男らしい素直な性格ではあるのだがな」
「…それで?」
「二人は神から大切な仕事を与えられていたが、父親は息子と共にいられるだけで楽しく幸せなあまり、仕事そっちのけで息子にちょっかいを出しまくっていた。息子も息子でバカ正直に反応するものだから仕事にならず、父親はますます面白がって息子をからかう。それ以外の接し方を知らないし、知っていたとしても恥ずかしくてできないのだろう。息子も似たような性格だから父親に対し、まったく素直になれずにいた。心の底では父を尊敬しているのに、いざ会話となると糸口が掴めないのか、反発して憎まれ口ばかり叩いている。息子も気持ちのいいまっすぐな青年だが、父親が絡むとどうにも素直になれないらしく、意固地と言ってもいいほどムキになる」
「……それから?」
「親子は毎日仲良く微笑ましいケンカばかりしていた訳だが、そのおかげで仕事は一向にはかどらなかった。神はたいそう深く嘆き、事態を重く見た。そして二人がそう簡単に接触できぬよう、あちら側とこちら側に分けてしまった。それからというもの、親子は思うように会う事はできなくなり、邪魔をされなくなった息子はきちんと仕事をするようになった。そういう事だ」
「父親はその後、どうなったの?」
「あちら側に渡された父親は悪い連中に意図的に操作されていた。それが自分と息子の為になると言い含められていたからな。結果、息子を助ける事に繋がったのだから、そう悪い展開でもあるまい。一緒にいた頃は叶わなかったのに、別れて久しい息子との一度の邂逅でそれだ。その時、息子とも和解したようであるしな」
「ふーん……でも、今の話と兄さんがどんな関係があるというんだい?」
「まだ分からぬか、セシル。一緒にいる事がすべてではない、私とお前は同じ道を歩まぬ方がいいという事だ。別々の道だからこそ、私がおまえの力になれる時があるだろう。同じ道を行き共倒れを起こしては、今までの道のりが無駄になるだけではないか? 私とお前は別の道を行きこそすれど、永遠の別れではなくいつかまた会える日が来るだろう。身近にいて互いが頼る事が当たり前になるよりは、離れているからこそ想う気持ちを深め、再会の日を目指すという目標を持つ事により向かう道が見える――互いの成長を促すとは思わぬか?」
「それはそうかも知れないけど……。うーん、なんか今の話、どこかで聞いたような内容だな…」