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唸り声を聞いて顔を出したバルバリシアは、机に向かって腕組みしている火のルビカンテの姿を見つけた。
彼の前には白い紙がぽつねんと置かれている。所在なさげな紙を前にしたルビカンテといえば、念力でそこに書面を浮き出させようとでもいうような、凄まじい顔つきだ。
「報告書? 提案書? どっちにしても実動部隊は厄介だこと」
ほほほと涼やかな声で笑う彼女がルビカンテの横に立つと、目を閉じ眉間に深い皺を刻んで苦悩に唸っていた彼は目を開け、バルバリシアを振り向いた。
「そんなものならば良い。今から書こうとしているのは嘆願書だ」
「まどろっこしいわね、兵の増強や物資の補給、作戦内容の提案ならば直接ゴルベーザ様に申し出ればよかろう。あの方はそこまで狭量でなくってよ。ルビカンテ、我らが主の器を見くびるでない」
「勘違いするな、バルバリシア。これを提出する相手はゴルベーザ様ではない。…DFF2にはアシストシステムというものがあってだな、早い話が戦闘中の術者の召喚により、他の者がサポートに入る事が可能なのだ。このルビカンテ、ゴルベーザ様のお役に立つべくアシストキャラとしての出演を果たしたい所存だ」
「前はゴルベーザ様だけでなく、他の連中にも力を貸してしまった部分が大きいが…そんなに出たいのか。ゴルベーザ様はいい迷惑かも知れぬぞ?」
我らが加担などせずとも、十分に主は強いではないかと言いたげなバルバリシア。
ブレイブが少ない相手が増加を狙っての召喚に対し、脊髄反射でミールストームを発動してしまい、ゴルベーザが溜め込んだブレイブととり変えてしまったまったバルバリシアとしては、苦い思いもあるのだろう。
似たような条件で、元々低い相手のブレイブを0にした所で大したダメージを与えなかったスカルミリョーネも同じ気持ちでいることだろう。さらに言えばスカルミリョーネは相手のブレイブが0の時に青いカーバンクルからルビーの光を使われ、反撃に呪いをかけたものの、元々0である相手はまったくのノーダメージ、召喚の無駄使いという失策もしでかしている。
かく言うルビカンテとして、ゴルベーザのブレイブが0の時に相手の召喚に反応したものの、0をいくら3倍にしようとも0である事に変わりなく、そろいも揃って役に立ったとは言いがたい。
本来召喚獣でない四天王が幻獣達を真似て頑張ってみたものの、どうにも間違った方向に力を発揮していた事は間違いなく、せめてアイテムだけでもと彼らが持参した武器防具ですら、ゴルベーザにとってはことごとく装備できなかったという事も大きい。バルバリシアはそこを指摘しているのだ。
しかしルビカンテは首を横に振った。
「いや、それだけではない。むしろ本題はこちらだ。DFF2には前作に加え、更に曲の追加がされるという」
「…それで?」
「前作での我らは出すぎた感があると思わぬか、バルバリシアよ」
「人気があって良い事ではないか」
「それによってもたらされた悲劇を忘れたか。我らが主、ゴルベーザ様のテーマはないというのに、我らがでしゃばってどうする」
「あ…」
「確かにゴルベーザ様はラスボスではない。しかし同じようにラスボスではないクジャとて、己のテーマ曲を引っさげているというのに。ゴルベーザ様がそのような些細な事を気にされるような方ではないのは承知している、しかし10の世界からはDFFに出演すらしていないシーモア戦の曲まで使われているのだぞ。これを重く見ずしてなにがゴルベーザ四天王か」
握り締めた拳を震わせ、悔しそうに奥歯を噛むルビカンテ。
彼の気概が伝わったのか、バルバリシアはそれまで浮かべていた妖艶な微笑みを美しい顔からすっと消すと「私もその嘆願書とやらの書き方を教えてもらおう。他の連中にも声をかけてくる」と言って姿を消した。
「うむ、頼む。ゴルベーザ四天王、今こそ協力の時。圧倒的な存在感を示し、耳にしたものを一筋の光も差さぬ絶望の底に叩き落す重層で無慈悲な美しい旋律を――繊細にして狡猾、絶対的な強さの中にも退廃的で耽美な風情も併せ持つゴルベーザ様の魅力を余す所なく表現したあの曲を、なんとしてもDFFに追加させるのだ。一丸となった我らが力、とくと見せてくれようぞ!」
かくして数時間後、紙を前にして熱烈に燃えながらも悩むルビカンテ、バルバリシア、スカルミリョーネ、カイナッツォの四人と、呼んでもいないのになぜか一緒に嘆願書を作成している竜騎士の姿が目撃されるのであったとさ。